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中世の知識と権力 [Intellectual History]

中世の知識と権力.jpg
マルティン・キンツィンガー(井本こう二・鈴木麻衣子訳)
中世の知識と権力 知は力となる(叢書ウニベルシタス946)
法政大学出版局 2010年 214+15頁 2800円+税

題辞 知は力となる
序文 教養について

第1部 中世の知識と中世における知識 近代への道
1.現代の危機、歴史のヴィジョン
2.信仰と知識
3.知識と知識社会
4.教養知識と行動知識
5.文化技法と象徴的資本としての知識
6.伝統性と個人性
7.コミュニケーションとしての知識

第2部 修道院の僧房と権力中枢 中世からの道
1.修道院の文化
2.修道院学校の秘密の場所
3.修道院の歴史
4.出自と知識
5.規律の重圧下での知識獲得
6.知識政策
7.知識の空間
8.大聖堂付属学校
9.学校、授業、学問
10.知識、有益性、出世
11.知的な風土
12.都市市民の新しい知識
13.大学における古いものと新しいもの
14.知識を巡る争い
15.王の知識と貴族の教養

あとがき 知識社会における教養、知識、権力

訳者あとがき
参考文献
索引

Martin Kintzinger
Wissen wird Macht. Bildung im Mittelalter.
Jan Thorbeck 2003

* * * * * * * * * * *

著者のキンツィンガーは、ハーゲン・ケラーのポストを継承し現在ミュンスター大学教授(経歴はこちら)。中世後期の教育組織の専門家である。1959年生まれだからまだ歴史家としては若いが、著作論文ともに膨大にある。本書以外に、

- Das Bildungswesen in der Stadt Braunschweig im Hohen und Späten Mittelalter. Verfassungs- und institutionengeschichtliche Studien zu Schulpolitik und Bildungsförderung(Beihefte zum Archiv für Kulturgeschichte, 32). Köln/ Wien 1990. [Dissertation TU Braunschweig 1987].

- Norma elementorum. Studien zum naturphilosophischen und politischen Ordnungsdenken des ausgehenden Mittelalters(Sudhoffs Archiv, Beiheft 34). Stuttgart 1994.

- Westbindungen im spätmittelalterlichen Europa. Auswärtige Politik zwischen dem Reich, Frankreich, Burgund und England in der Regierungszeit Kaiser Sigmunds(Mittelalter-For­schungen, 2). Stuttgart 2000. [Habilitationsschrift FU Berlin 1997].

- Die Erben Karls des Großen. Frankreich und Deutschland im Mittelalter. Ostfildern 2005.

- Internationale Beziehungen im europäischen Mittelalter. Stuttgart 2011 im Druck.

二冊目は中世後期の自然哲学の秩序思想にかかわる著作ですね。

中世において、知識がどのように利用されたのかという問題意識に基づく小著である。同様の問題設定にたった著作としては、ジャック・ベルジェ『ヨーロッパ中世末期の知識人』があるが、ベルジェはフランスの事例を多く引くのに対し、キンツィンガーはドイツの事例を基本としている。そういった点では相補的。第1部は近代の問題関心から中世を見、第2部は中世の歴史を近代と接合しようとする。ドイツの学問蓄積を踏まえ、情報はかなり圧縮したかたちで詰まっている。

ハルトゥング『中世の旅芸人』とライヒェルト『世界の体験』につづく、井本・鈴木共訳の三冊目。選書はいいと思うが、訳文はやや硬い。また、ときおりよろしくない訳語が散見される。たとえば、「兄弟」はBruederの訳だと思うが、文脈上「修道士」にしないと読む側は?である。「伝承」はTraditionenだろうが、歴史学の場合は「史料」と訳したほうが収まりがよい。

著者紹介に「本書の他に、『中世フランス・ドイツにおけるカール大帝の遺産』(2005年)などの著書」とあったのでロベール・フォルツの研究を引き継ぐのかと思ってググると「Die Erben Karls des Grosse. Frankreich und Deutschland im Mittelalter」である。『カール大帝の遺産。中世のフランスとドイツ』が正しい。たぶん概論だろう。

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