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バウドリーノ [Literature & Philology]

バウドリーノ.jpg
ウンベルト・エーコ(堤康徳訳)
バウドリーノ(上)(下)
岩波書店 2010年 vi+336+ii+357 p.

もう都内の書店には並んでいるだろうか。名古屋と神戸はまだであった。

エーコの小説としては4作目。『薔薇の名前』が14世紀、『フーコーの振り子』が16・17世紀、『前日島』が17世紀、『バウドリーノ』が12世紀、『王女ロアーナの神秘の焔』が20世紀、そして今月出たばかりの『プラハの墓地』が19世紀を舞台とする。現時点での感想は無粋なので、岩波のHPにある本書の紹介を転載する。

「『薔薇の名前』で世界の読者を魅了したエーコが、ふたたび中世を舞台に放つ物語。時は十字軍の時代。神聖ローマ皇帝フリードリヒの養子となった農民の子バウドリーノが語りだす数奇な生涯とは……。エーコが遊びごころたっぷりに、史実とフィクションを織りまぜながらつむぎ出す破天荒なピカレスク・ロマン。話題のベストセラーがついに登場!」

ピカレスク・ロマンかどうかは議論の余地があるが、古代と東方という二つの異境にまで関心の向く中世オタにはエヴァンゲリオンがそうであったようにマニアックな(妄想的な)読み方を、標準的に中世を知る人には12世紀西欧の情報が詰め込まれた歴史絵巻としての読み方を、中世なんて知らねーよという人には単純に痛快冒険小説としての読み方を、というように誰でも愉しむことのできる小説である。その点は、歴史フィクションとしても推理小説としても十分な知的刺激を与えてくれた『薔薇の名前』と同じ。

せっかくの話題作である。本書を軸に、西洋中世を世間にもっと知ってもらうような仕掛けを、中世学者も出版社もすればよいのではないかと思う。

なお中世学者としてのエーコは、近年大きな仕事をした。エーコ監修『中世』全12巻。一冊600ページを越えている。どうも書店で売られる書籍ではなく、新聞の売店で手に入れる代物のようである。日本にも翻訳権を売り込みに来たと仄聞するが、さすがに難しいだろう。個人的に入手できるかどうか、イタリア在住の友人に問い合わせてみたい。


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