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The Oxford Dictionary of the Middle Ages [Reference & Dictionary]

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Robert E. Bjork ed.in chief
The Oxford Dictionary of the Middle Ages, 4. vols.
Oxford: Oxford UP 2010, 1968 p.

2010年5月発売予定。ずいぶん以前からHPがあったが、あまり更新もされていなかったので、本当に実現するのか疑っていた。

現段階で最高の中世事典は、当然の事ながらLexikon des Mittelalters, 9 vols. Munchen: Artemis 1980-98である。取り上げられている項目の包括性を考えるならば、すべての中世研究者がまず手にすべき事典である。ただしドイツ語のため、必ずしも多くの人に使われているようには見えない。もったいないと言うか、いかんと思うが。大学図書館にある革装版は1冊5万位するが、その後廉価版、さらにペーパーも出た。残念ながらどれも絶版だと思う。しかし現在Brepolsが同出版社が運営しているBrepolisというオンライン・データベースで提供している。値段がよくわからなかったがこの前洋書屋から送られてきた広告を見ると、個人であれば年間3万はしなかった。英語ではジョセフ・ストレイヤーが編者をつとめたThe Dictionary of the Middle Ages, 14 vols.があるが、こちらは項目間の質の隔たりが大きすぎるのと参考文献がヘボイので、ちょっと…。一巻本では断然、文学のザンク、哲学のド・リベラ、歴史のゴヴァールという大物編者三頭体制によるDictionnaire du moyen age, Paris: PUF 2004である。 ペーパー版は6千円くらい払えば手に入る。

新しい事典を出す以上、従来の事典と何らかの差別化を図らねばならない。本事典は、ボリュームから言えばLexikon des Mittelaltersよりは小さいが、Dictionnaire du moyen ageよりは大きいといったつくり。500の図版や50の地図は楽しみである。しかしもっとも大事なのは内容である。編集体制を見てみよう。

General Editor: Robert E. Bjork
Advisory Board: Giles Constable, Helen Cooper, R. R. Davies, Roberta Frank, Edward James
Editorial Board: Theodore M. Andersson, János M. Bak, Elizabeth A. R. Brown, Gene Brucker, R. R. Davies, Stephan R. Epstein, Margot E. Fassler, Michael S. Flier, Paul H. Freedman, Simon Gaunt, John B. Gillingham, Richard H. Helmholz, John Hines, C. Stephen Jaeger, Herbert L. Kessler, Felice Lifshitz, David C. Lindberg, Pamela O. Long, David Luscombe, Joseph H. Lynch, Ivan G. Marcus, Steven P. Marrone, Ian Netton, David Nicholas, Huw Pryce, Timothy Reuter, Linda Ehrsam Voigts, Jan Ziolkowski

アメリカ(とイギリスの一部)の中世学会が総力を結集しているのは良く分かる。アドヴァイザリ・ボードのメンツもなかなか興味深い。ティモシー・ロイターはもう亡くなっているから、初期中世はエドワード・ジェームズが仕切るのだろうか。…味わい深い人選だけど、人的ネットワークという点でもパトリック・ギアリージャネット・ネルソンじゃないかな。

北欧に関しては問題。たしかにジェネラル・エディターのビョークは『ベーオウルフ』の、アドヴァイザリ・ボードのロベルタ・フランクはスカルド詩を含むゲルマン韻文の、エディトリアル・ボードのテオドール・アンダーソンは「国王サガ」の第一人者である。彼らが名を連ねていることで北欧も無視をされていないことはわかるが、彼らの関心はあくまでアイスランドである。何度も言うが、アイスランドがわかったところで北欧中世はわからない。アイスランド学者の関心がむかうのはせいぜいヴァイキングの時代で、それ以降のキリスト教時代にはほとんど眼を向けない。アメリカの中世学者にとって、北欧中世=アイスランドorヴァイキングなのである(残念ながら事情は日本も、そしてかなりの程度ヨーロッパ諸国も一緒)。この5月にフォーダム大学で開かれる大規模シンポジウム「New directions in medieval Scandinavian studies」の報告者の顔ぶれとその内容を見ても、アイスランドがほとんどを占める。

まあこんなことはわたしの杞憂で、ふたを開けてみればしっかりしたものになっているのかもしれないけれども。さっそく予約注文を出しておいた。



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