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大学の歴史 [Intellectual History]

大学の歴史.jpg
クリストフ・シャルル/ジャック・ヴェルジェ(岡山茂・谷口清彦訳)
大学の歴史
白水社クセジュ 2009年 174+ix頁

序文
第1部 中世の大学から、アンシアン・レジームの大学まで
第1章 中世における大学の誕生とその躍進
第2章 大学と中世文化
第3章 近代の大学、権力、社会(16-18世紀)
第4章 近代における大学の危機と改革
第2部 大革命以後
第5章 第一の革新 学問か、それとも職業か(1780年頃-1860年頃)
第6章 第二の変革 研究か、それとも社会的開放か(1860-1940年)
結論 総決算 1945年以降のあらたな大学の世界へ
解説
訳者あとがき
参考文献

* * * * * * * * * *

民主党仕分け部隊(実体は財務省)はやってくれますな。ジュニアの科研や学振をまず切って棄てるというのはどういうことか。ジュニアにもシニアと同じ舞台で競争しろということなのだろうか。それならそれで構わないが、きちんとシニアの業績もチェックしろよな。

日本でも大学の歴史は流行であるらしい。竹内洋の一連の著作であるとか天野郁夫『大学の誕生』(中公新書)とかは読み応えがある。どうしても東京大学に関心が集まるが、日本は国公立と私立が並存するという世界的に見ても興味深い状況にある。それを踏まえて大学史研究は今後近現代史においてもっと深められるべき課題となるだろうし、ぜひ深めてほしい。だいたい自分たちが学び、教え、組織する大学に対し関心を持たなかったこれまでがおかしいのである。

小著だが非常によくかけている。ヴェルジェは中世史ではおなじみ。フランス中世大学史の泰斗であり、邦訳もいくつかある(たとえばこれ)。シャルルは近代思想史の大物。大著の翻訳がある。第1部をベルジェが、第2部をシャルルが書いているが、通して読んでもすっきりとした流れとなっている。

大学は西洋固有の制度であるとは、ひとつの定説となっている。本書が面白いのは、近世から近代にかけての植民地拡大プロセスと並行するかたちで、その制度が世界各地に輸出されたプロセスを、かなりの紙幅をとって論じていることである。私が知る限り、従来の大学史研究では欠落していた一コマであり、近代世界の生成において大学システムがどのように関わっていったのかを考えるための出発点となる。もちろん近代の知の生成においては、大学だけではなく、地方アカデミーやサロンが果たした役割が大きいことは知っておくべきだが。

復刊されると仄聞するハスキンズの名著でも議論の対象となっていたが、学生もあいかわらず面白い。「学生たちは職業作家に論文を執筆してもらい、試験には替え玉を送り込んだ。試験登録はあらかじめ郵便で済ませてしまう。試験志願者が試験前夜になってようやく大学町に到着するということもしばしばだった」(80頁)。

最後の「解説」はクセジュにしては異例。訳者の岡山がどういう人か私は知らないが、原著者の意図を超えた内容を付け加えようとしている。端的に言えば余計。ヴェルジェもシャルルもあくまで歴史家であり、仮に彼らが現在の大学がおかれた状況に、また大学をそのような状況に置いた政府に対し批判的であるとしても(序文から判断するにそれは正しい)、現状批判を主目的として本書を書いたわけではない。近年の成果に基づいた確実な知を読者に届けるためである。そもそも岡山はまず自分の勤務先がどのような現状であるのか(教育水準、教師の給与、授業料など)を問い直したほうがいい。

ついでに言えば、財布を握る財務官僚が何を考えているのか、大学関係者は知っておくべきである。文科省は独立しているが、財務省による分配あっての政策立案機関である。たとえばここにある見解に論理的に反論できない限り、大学予算は切り詰められる一方である。



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