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ヴォルガ・ブルガール旅行記 [Sources in vernacular]

ヴォルガブルガール旅行記.jpg
イブン・ファドラーン(家島彦一訳注)
ヴォルガ・ブルガール旅行記(東洋文庫789)
平凡社 2009年 384頁


凡例
はしがき
目次
地図・表一覧


第1章 バグダードからジュルジャーニーヤーまで
第2章 テュルク系諸部族
第3章 サカーリバ王国
第4章 ルース人について
第5章 ハザル・ユダヤ王国

解説
参考文献
索引(地名、人名、事項)

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訳者が大学院生時代に翻訳したものを、40年ぶりに改訳したもの。1969年版は薄い紀要のかたちで刊行され入手も困難であったが、本書によって日本語を読めるすべての人がこのまことに興味深い史料に容易にアクセスできることになった。写本から説き起こす解説と訳注の徹底振りはいつもの家島である。著名な史料なのでこれまでにもさまざまな言語で訳注が出されているが、本書がもっとも詳細かつ正確なものであろう。

本書はイスラム史や中央アジア史のみならずヨーロッパ史にとっても重要な史料であることはかねてから言われてきた。というのも第4章のルース人は北欧人の、第5章のハザル・ユダヤ王国はユダヤ人の生活の一端をのぞいた他者の証言だからである。もちろんそこにはアッバース朝カリフの使節であるイブン・ファドラーンのもつフィルターは通されているが、それでもなお、彼の証言は同時代のとりわけ北欧社会を知るのに不可欠の情報をもたらす。

なお家島は10月31日に北海道大学スラブ研究センターで開催されるシンポジウム「北西ユーラシア歴史空間の再構築 ロシア外部の史料を通じてみた前近代ロシア世界」において、「アラビア語史料に記録された北西ユーラシア世界 とくにイブン・ファドラーン『報告書(リサーラ)』による」と題した講演を行う。詳細はこちら

最後に家島の言葉を記しておこう。いまだに横のものを縦にしたような適当な仕事で歴史学者然としている連中は耳をかっぽじって聞け。
「私は、こうしたアラビア語による地理書・旅行記のなかで、とくに重要な基礎文献を選んで、原写本の厳密なテキスト・クリティークをおこない、多くの傍証史料との比較研究をおこなうことで、おのおのの史料的価値を最大限に引き出すこと、それと同時にその研究成果をいわゆる研究者だけでなく、一般読者にも広く提示することが必要であると考えている。私自身も、そうした研究のために、今後も関連史料の訳注を続けていきたいと思っている」(22頁)。


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