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デンマークを知るための68章 [Medieval Denmark]

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村井誠人編
デンマークを知るための68章(エリアスタディーズ76)
明石書店 2009年 410頁

はじめに

1.デンマークの地理
第1章 デンマークの地勢
第2章 Danmark er et fladt land
第3章 コペンハーゲン
第4章 ぶらりデンマーク
第5章 「南ユトランド」
第6章 グリーンランド・フェーロー諸島

2.デンマーク語とは
第7章 デンマーク語とは
第8章 デンマーク語の歴史
第9章 デンマーク語の方言
第10章 デンマーク語の発音
第11章 デンマーク語あれこれ(1)
第12章 デンマーク語あれこれ(2)
【コラム1】ユニット強勢

3.デンマークの政治
第13章 デンマーク政治の特徴
第14章 デンマークの諸政党
第15章 デンマークとEU
【コラム2】労働市場における「デンマーク・モデル」
第16章 デンマークの王室
第17章 六八年の世代
第18章 デンマークの移民問題
第19章 ムハンマド風刺画問題

4.デンマークの歴史から
第20章 ヴァイキング時代のデンマーク
第21章 初期デンマーク王列伝
第22章 マルグレーテ1世
第23章 ハンザとデンマーク
第24章 オレンボー朝の二人の国王
第25章 17世紀オランダの動向
第26章 デンマーク絶対王制の成立と発展
第27章 デンマークの海外進出
第28章 18世紀を彩る王室物語
第29章 「自由記念碑」の建立
第30章 対ドイツ問題
第31章 デンマークのナショナルリベラル
第32章 19世紀後半の政治・文化のラディカリズム

5.デンマークの文学・文化
第33章 「本当に読みたかったアンデルセン童話」
第34章 近代文学にみるアンデルセン童話のアレゴリー
第35章 現代文学にみるアンデルセン童話のアレゴリー
第36章 現代のデンマーク児童文学
第37章 キルケゴール
第38章 キルケゴールを生んだデンマークの精神性
第39章 N・F・S・グロントヴィ
【コラム3】グロントヴィのキリスト教観と北欧神話観
第40章 フォルケホイスコーレ
第41章 ホイスコーレ歌集
第42章 風力発電

6.デンマークの芸術
第43章 デンマークの近・現代音楽
第44章 『妖精の丘』
第45章 デンマーク王立バレエ団
第46章 カール・Th・ドライヤーと同時代のデンマーク映画
第47章 デンマーク映画と現代
第48章 デンマーク絵画の再評価
第49章 デンマーク・デザイン

7.デンマークの暮らしと社会
第50章 デンマーク社会福祉事情(1)
第51章 デンマーク社会福祉事情(2)
第52章 デンマークに暮らす
第53章 デンマークで絵を描く
第54章 デンマークの食事
第55章 オープンサンドイッチ
第56章 おいしいスウィーツ
第57章 デンマークビール
第58章 隣国への買い出しツアー
第59章 デンマークの年中行事

8.彼我のデンマークと日本
第60章 文化の翻訳
第61章 デンマーク人の日本「発見」
第62章 2002年度コペンハーゲン大学最優秀教師賞
第63章 デンマークの学生に日本語を教える
第64章 デンマーク留学事情
第65章 想像を超える家族模様
第66章 彼岸の喫煙風景
第67章 様変わりの新聞事情
第68章 「日本のデンマーク」と「日本デンマーク」

おわりに

* * * * * * * * * *

このシリーズもすでに76冊目。先月スウェーデンが刊行され、少し前にフィンランドが出た。あとノルウェーとアイスランドが出れば北欧5カ国が揃うのだが、出るのかな。

まず歴史のコーナーに目が行く。ヴァイキングの次がカルマルというのは相変わらずの状況だが、各章はそれでも日本語で読めるものとしてはもっとも詳細。このご時勢には珍しく、王の歴史に重心をおいている。とはいえ通史ではなく断章なので、デンマーク史の全体がわかるわけではない。執筆者の理解にも差があり、とりわけクリスチャン4世をめぐる評価が統一的ではない。多人数でものを書くときには避けられない事態ではあるが、この本を手に取る初学者は混乱するかもしれない。

本書の読みどころは、編者をはじめとする執筆者による体験的デンマーク理解である。デンマークは小国とはいえ、そこを訪れ生活するひとに対してさまざまな貌を見せる。歴史的時間の中で社会はどんどん変化しているので、どれが正しいというわけではない。このような一般向けの本で社会を論じる場合、対象を無理に客観視しようとせず、ある程度自分なりの踏み込み方をしたほうが、本質というか「デンマークらしさ」が仄見えてくる。とりわけ1969年に初めてコペンハーゲン大学に留学して以来40年間同じ国を見続けてきた編者の目は、その変化に批判的でありながらも温かみを感じる。

本書の執筆者の多くは、政治思想でいえばおそらくリベラルに属する。いってみれば68年世代の理想に共感を示している。だから近年のデンマークの「保守化」や「右傾化」に対し、相当の違和感をいだいている。それは各章を読めば明らかである。しかしである、なぜ近年のデンマークが理想の国とはかけ離れた「普通の国」になりつつあるのか、ページのどこを繰っても何も書いていない。書いていないと言うのは言い過ぎで、その根底には移民問題があることはなにがしか触れている。でも、この問題を本当に論じたいのであれば、経済問題に目を向けなければならない。金銭的に貧しく精神的に豊かなデンマーク→金銭的に豊かで精神的にも豊かなデンマーク→金銭的に豊かで精神的に貧しいデンマークという風に変わったとするならば、一国の経済問題が移民問題と深くつながっていると考えるほうが適切ではないか。ついでに言えば、68年以降の豊かさと平等主義は、デンマーク人から知的ハングリーさを奪った。いまデンマークでは国内でろくな研究者が育たないために、海外にデンマークの研究機関で働いてくれる学者を求めている。

編者は1947年生まれ。いわゆる68年世代である。「68章」という数字は、その表れなのかもしれない。なおわたしが編んだなら、「チボリ」、「レゴ」、「ハンドボール」、「国立博物館」は入れていただろう。

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