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文字の歴史 [Literature & Philology]

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スティーヴン・ロジャー・フィッシャー(鈴木晶訳)
文字の歴史 ヒエログリフから未来の「世界文字」まで
研究社 2008年 472頁

はじめに
第1章 刻み目から書字板へ
第2章 話をする図像
第3章 スピーキング・システム
第4章 アルファからオメガまで
第5章 東アジアにおける文字の「再創造」
第6章 アメリカ大陸
第7章 羊皮紙のキーボード
第8章 未来のシナリオ

訳者あとがき
引用文献
精選参考文献
索引

Steven Roger Fisher
A History of Writing
Reaktion Books, 2001.

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著者の専門は、クレタ島のファイストス円盤とイースター島のロンゴロンゴ文字らしい。この圧倒的な時間的空間的へだたり、歴史学ではありえん。

それはともかく、面白い。通常歴史家は校訂された史料を用いるため、文字そのものを意識することは少ないが、ナマの史料に接した場合、文字そのものが持つ情報がとても重要になる。古書体学だとか古筆学だとかいうやつ。書体の変化は、ヨーロッパや中国については多少知ってはいたが、もちろんそれ以外の地域についてもあるわけだ。面白かったのはメソアメリカの第6章。マヤとかアステカなのだが、ヨーロッパがラテン・アルファベットで云々しているときに、絵文字を使っていた。この共時性を考慮して、ヨーロッパによるアメリカ征服が、先住民の何を変えたのかに思いをめぐらせると近世世界の違う風景が描けるような気がする。文字という観点からは、網野による好著にもたぶん書いていなかったなあ。

ヨーロッパ史に関心のある人は、第4章と第7章。文字という観点から中世ヨーロッパを見直してみるのも面白いなあと思った。言語史はよくみるけど、文字の歴史は、いや確かに本はたくさんあるけど、社会コンテクストに落として論じたものは案外少ないような気もする。だから、たとえばルーンに起源について、ルーイジェンガのような本が書かれるわけだが。

翻訳そのものは読みやすい。退屈な夜の新幹線でビールをあおりながら一気に読めた。一点。わたしはこの「訳者」がどのような方なのかわからないが、後書きにこうある。「翻訳にあたっては、青木信子、高橋由紀子、早瀬邦子、兵頭敏江の四人の方々に下訳をお願いし、その後、千代美樹さんに原文と訳文の対照チェックをしていただいた。むろん翻訳の責任はすべて鈴木晶ひとりにある」。この場合、「監訳者」というんじゃないの。

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