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ジャン・ブラスカの日記 [Literature & Philology]

ジャン・ブラスカの日記.jpg
ヴァンバ(池上俊一訳)
ジャン・ブラスカの日記
平凡社ライブラリー 2008年 478頁

ジャン・ブラスカの日記
訳者あとがき

Vamba
Il giornalino di Gian Burrasca
Giunti Editore 1990

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訳者注目。でなければ、こんなブログで取り上げません。

これも仕事の一環と思い、勤務中、ソファーで寝転がって読了。一見、とても分厚いけれど、3時間で読めました。それくらい、面白かった。あとがきも力が入っていた。本職の中世史の本のそれよりも。

アゴタ・クリストフじゃないけれど「悪童日記」。読んで、真っ先に思い出したのが、ティル・オイレンシュピーゲル。阿部謹也の訳で岩波文庫に入っている。ただこれ、岩波があまり刷らないものだから、希少本で、かつて入手は困難だった。が、いまアマゾンをみると、古書で安価に手に入る。よい時代になったものだ。

それはともかく、ヨーロッパには、オイレンシュピーゲル以来、ながらく「悪童日記」の系譜があるらしい。日本は、そんなもんあったけなあ。都知事の過去の栄光のようなアクタレ青年群像はあるんだけどな。私は「浦安鉄筋家族」と「ゆけ、稲中卓球部」くらいしか思い出せない。ああ、貧しい読書経験…。

一か所、とても印象に残った場面がある。社会主義者が経営するお菓子屋に、「社会主義者なら平等に配分しろ」とかいって、子供たちが、最初は20人、その後次から次へと増え、300あったお菓子を食べつくす。個人であればあったはずの責任感、羞恥心、他者への配慮が、集団となった瞬間に、消え去る恐ろしさ。それこそ群衆の力といえばそうかもしれないが、タケシの「赤信号、みんなで渡れば怖くない」である。これだけいるんだから私がしゃべっても別に影響ないでしょと考えるアホを生み出す、大人数講義に通じるものがある。この著者、どうみてもアカぎらいでしょ。最後に主義者が選挙で負けてるし。これもまた、本書を支える社会背景。現代史という観点で読み解きたければ、最初に掲載された新聞がどのような立場であるのか、知っておくべきである。

「王様の耳はロバの耳」と言った少年の末路を考えるに、子供は純真ではすまないのも現実。純真な子供は、セミに爆竹を付けて飛ばすし、道に落ちている石で人を殴るし、ヤメレつっても海で人を溺れさせようとするよ。純真だから、他者の痛みもまだわからない。

たまたま寝床で読んでいた本。
「しかしとくに危険なのは十歳前後の子供である。彼らは途方もないいたずらを平気でする。自動車の道路に大きい石を並べて車を止めておもしろがったりするのは、まだいい方だ。谷に人がいると見ると、崖の上から石を投げたり(走る自動車に石を投げることはしょっちゅうだ)、さらに、崖下の人に上から岩石を落とすのである。それがうまく命中して人が怪我をしたり死んだりすると、彼らは手をうって喜ぶのであろう。恐るべき小悪魔である」柳宗玄『カッパドキヤの夏』(中公文庫 1988年)74-75頁

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