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シリーズ・ヨーロッパの中世 [Medieval History]

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池上俊一・河原温編
シリーズ・ヨーロッパの中世 全8巻
岩波書店 2008年- 平均320頁


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シリーズ構成
第1巻 中世世界とは何か(佐藤彰一)
第2巻 都市の創造力(河原温)
第3巻 辺境のダイナミズム(小澤実・薩摩秀登・林邦夫)
第4巻 旅する人びと(関哲行)
第5巻 ものと技術の弁証法(堀越宏一)
第6巻 声と文字(大黒俊二)
第7巻 芸術のトポス(原野昇・木俣元一)
第8巻 儀礼と象徴の中世(池上俊一)

11月26日より毎月一冊づつ刊行予定。予価各巻3000円弱。

編集にあたって
 ヨーロッパ中世史の研究は、新たな史料の校訂・刊行やその利用法の刷新、多面的なテーマ設定などで、このところ急速な進展を見せている。日本においても、世界的レベルのオリジナリティあふれる研究論文が、次々と発表されつつある。まさに中世研究ルネサンスと言っていい。
 本シリーズは、このように新たな段階に入った研究の最先端の姿を、広い読者層に紹介すべく、脂の乗り切った研究者十一名が、それぞれ得意とする切り口から中世世界にアプローチしたものである。文学や美術の専門家にも参加してもらうことで、「西洋中世史」の「西洋中世学」への脱皮を謳うマニフェストともなっている。ヨーロッパ中世という固有の世界に、都市・辺境・移動・技術・伝達・儀礼といったテーマを通じて切り込み、この魅力あふれる時代が私たちに開示する豊穣さを、読者に伝えたいと願っている。
 二十一世紀に入った今日、ヨーロッパ世界統合の進捗は著しく、近代国民国家の政治的重要性は相対化した。だが同時に、独自の伝統をもつ地域が復権し、影をひそめていた民族文化が活性化しつつあるのも事実である。このように、現在、再編途上にあるヨーロッパ世界の母体となった中世世界のありようを、歴史学のみならず隣接する人文諸科学の成果をもとりいれ、多様な視点から解読しようとする試みは、時宜にかなったものであろう。
 本シリーズを構成する八冊は、それぞれ性格の異なる八枚の「鏡」であり、これを合わせれば、ヨーロッパ中世の「全体」が見えてくる。この八冊を読まずして、ヨーロッパは理解できない、と確信している。
2008年8月

池上俊一・河原温


以上が、編者によるシリーズの目的である。巻の構成から判断する限り、広い意味での社会史となるだろうか。書物の体裁としては、表紙も含めて、かつて中央公論新社から刊行された『日本の中世』全12巻に近い。法行政、信仰、農業と商業といった従来のヒストリオグラフィでの根本的なテーマはあえて避け(それは第1巻と3巻で大まかに拾う)、ただ文字テクストを読むだけでは結果の得られにくい主題(特に第5巻と第7巻)を選んでいるようにもみえる。講座物を建てればいつもおまけのように入る思想も、ここでは回収していない。私自身は「西洋中世学 Medieval Studies」に色々と思うところがないでもないが、ともあれ、問題を解決する手がかりが文献テクスト以外にも広がりつつある現状は歓迎すべきであろう。西洋中世学会もうまくいけばと願っている。

執筆者はロマンス語圏の専門家がほとんどを占めるが(フランス4、イタリア2、スペイン2、フラマン1、チェコ1、デンマーク1)、それは日本における現在の中世史学の現状の反映でもある。増田四郎、堀米庸三、世良晃志郎の時代は中世史=ドイツ史だったんだけどねえ。良い論文が書けるからといって良い通史が書けるとも限らないし、逆もまた然りである。全体としてどの程度成功したと言えるだろうか。



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