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Medieval Scandinavia. An Encyclopedia [Reference & Dictionary]


Philippe Pulsiano(ed.)
Medieval Scandinavia. An Encyclopedia(Garland encyclopedias of the
Middle Ages 1).
New York: Garland, 1993, 768 p.

英語で読める唯一の中世北欧事典。例の「中世北欧文化史事典」と同じく、採り上げる項目は人名を極力省き、歴史事項や作品に絞っている。それも編者が文学研究者であるためか、アイスランド文学にかなりの紙数が割かれており、歴史家には不満がないといえなくもない。英語圏に著名なアイスランド文学研究者は少なからずいるが、それに比べて中世盛期から後期にかけての歴史展開や事件に関心を持つ者は限りなくゼロに近いからである。

しばしば事件史はもう古いとかの妄言を聞くが、北欧中世に関してはその「古い」はずの事件ですら十分な位置づけができておらず、したがってそのヒストリオグラフィの道程や研究分野の展開の軽重を、英独仏のような研究者大国と同列に論じることはできない。「ボーンヘーフェズの戦い」、「エストニアの統治」、「エンゲルブレクトの反乱」、「カレリアの征服」といった事項が、中世史家のなかで「ブーヴィーヌの戦い」、「ラテン王国の成立」、「ワット・タイラーの乱」、「ラス・ナヴァス・デ・トローサの戦い」といったような事件と並べて論じられるようになる気配は、欧米の中ですらまだでてこない。「ヴァルデマー、誰それ?」が現状であろう。

ニルスの短期留学生向け講義でも、デンマーク中近世の人物について誰一人として知らなかった。わざわざデンマークに来て、中世史の講義を受講するにもかかわらずである。ヴァイキングとサガ・エッダ、これで全てである。それだけヴァイキングとサガ・エッダのインパクトは強烈であるという見方もできるが、中世北欧がそれだけで賞味されるとすればいかにも寂しい。

本書と同じ「ガーランド中世百科事典」シリーズは、途中で出版社をラウトリッジに替えながら、今に続く。英語であり、参考文献があるという点で至極便利。
2. William W. Kibler et al.(eds.), Medieval France: An encyclopedia(1995), xxvi+1047 p.
3. Paul E. Szarmach et al.(eds.), Medieval England: An encyclopedia(1998), lxiv+882 p.
4. Pam J. Crabtree(ed.). Medieval archaeology: An encyclopedia(2001), xxi+426 p.
5. John B. Friedman & Kristen Mossler Figg(eds.), Trade, Travel and Exploration in the Middle Ages(2000), xxxix+715 p.
6. John M. Jeep(ed.), Medieval Germany: An encyclopedia(2001), xxxvii+928 p.
7. Norman Roth(ed.), Medieval Jewish civilization: An encyclopedia(2003), xxi+701 p.
8. E. Michael Gerli(ed.), Medieval Iberia: An encyclopedia(2003), xxx+920 p.
9. Christopher Kleinhenz(ed.), Medieval Italy: An encyclopedia(2004), 2 vols., xxx+1290 p.
10. Seán Duffy(ed.), Medieval Ireland: An encyclopedia(2005), xxxi+546 p.
11. Steven J. Livesey(ed.), Medieval Science, Technology, and Medicine: An encyclopedia(2005), xxv+598 p.
12. Richard K. Emmerson(ed.), Key Figures in Medieval Europe: An encyclopedia(2006), xliv+733 p.
13. Josef W. Meri (ed.), Medieval Islamic civilization: An encyclopedia(2006), 2 vols., xliii+878+55 p.
14. Margaret C. Schauss(ed.), Women and Gender in Medieval Europe: An encyclopedia(2006)

第5巻は項目を拾っていて飽きない。私はこのシリーズの編者をほとんど知らない。10巻のショーン・ダフィくらいである。どの巻も文学研究者が中心となっているのかもしれない。いずれにせよ個人で購入するには憚られる値段だが、中世史講座のある大学の図書館はそろえておいて損はないように思う。母校には随分と入れてもらった。


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