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西洋音楽の曙 [Liturgy & Music]


ジェームズ・マッキノン編(上尾信也監訳)
西洋音楽の曙(西洋の音楽と社会1 古代・中世)
音楽之友社 1996年 352頁

序文(スタンリー・セーディ)
第1章 古代・中世の西洋文明(ジェームズ・マッキノン)
第2章 前古典期ギリシアにおける《芸術》としての公開の音楽(アンドルー・パーカー
第3章 キリスト教古代(ジェームズ・マッキノン)
第4章 グレゴリオ聖歌の誕生 カロリング時代(ジェームズ・マッキノン)
第5章 単旋律聖歌の変貌:変革と刷新の歴史(デーヴィド・ハイリー)
第6章 多声音楽の誕生と発展:修道院、大聖堂、大学(マリオン・S・ガシー)
第7章 中世イングランド 950-1450年(ピーター・M・レファーツ)
第8章 フランスの宮廷と都市 1100-1300年(クリストファー・ページ)
第9章 アルス・アンティクア/アルス・ノヴァ/アルス・スブティリオル(ダニエル・リーチ=ウィルキンソン)
第10章 イタリア・トレチェント(マイケル・ロング)
第11章 中世の終り(ラインハルト・シュトローム)

監訳者あとがき
索引

James Mckinnon ed. Antiquity and the Middle Ages. From Ancient Greece to the 15th century(Man & Music Series) London: Macmillan, 1990, 352 p.

* * * * * * * * * *

美術史と同様、音楽史も様式史に限定されると一般史家には近寄りがたいが、本書のようにコンテクストと関連付けてくれれば、もやもやしていたものが腑に落ちる。一般史家にとって美術史や文学史は身近になってきたようにも思うが、同じ「芸術」史でも音楽史との相互交流は、欧米でもまだまだのように思う。いわゆるアナール派も、少なくとも中世史に関しては、音楽テクストには手をつけていなかったのではないか。少なくとも私は知らない。

もちろん楽譜の残る聖歌や中世末期の宮廷音楽ばかりが中世のサウンドスケープを構成していたわけではなく、都市にも農村にも旋律は溢れていたはずである。創られた伝統という可能性を差し引いたとしても、民俗音楽にもその名残はあるだろうし、十字軍の歌というのもどこかで見た。初期中世以降の詩人たちも独特の節回しに合わせて詩を謡いあげていたのだろうと思う。歴史学における音の重要性は、かつて阿部謹也が提起していたように思うが、それからどれだけの人が関心を持ったというのだろう。
阿部謹也・網野善彦・石井進・樺山紘一『中世の風景』(上)(下)(中公新書 1981)(この座談会出席者は、樺山を残し、皆この世を去った…)

監訳者の上尾信也などは被差別民としての楽師の研究で学位を取得した人だし、かつて池上俊一も史学会の口頭発表で中世の音の世界について論じた。音楽史家と一般史家をつなぐ研究がもっと出てくればと思う。
上尾信也『歴史としての音 ヨーロッパ中近世の音のコスモロジー』(柏書房 1993), 253頁

既に絶版のようだが、改訂増補してちくま学芸文庫あたりで復刊すべきだと思う。

上尾がしばしば参照するのは、
ヴァルター・ザルメン(上尾信也・加藤博子訳)『「音楽家」の誕生 中世から現代までの音楽の社会史』(洋泉社 1994), 278頁
ヴァルター・ザルメン(上尾信也・網野公一訳)『コンサートの文化史』(ポテンティア叢書33)(柏書房 1994), 346頁

1926年生まれのザルメンは、中世音楽社会史の大家である。


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